去年の春休みまでの僕は、なんてことのない普通の高校生だったと思う。いや、むしろ進学校のペースについて行けずに落ちこぼれ一歩手前の劣等生だったのだから『なんてことない』という言葉を使うにも値しなかっただろう。名前が挙がるとしたら学期ごとの職員会議で赤点候補者とか遅刻常習者とかそんな不名誉な対象として語られるときぐらいだ僕は、春休みに吸血鬼とアロハのおっさんに出会った。そしてゴールデンウィークに猫と争い、そそ後にも蟹と蝸牛、猿と蛇、ついでとばかりにもう一度猫と会ったと思ったらスズメバチと不死鳥と、それはもうそれまでの平凡な人生はまやかしだったのかと言わんばかりのハイペースで様々な怪異と出会い、そして時には戦った。


 高校卒業と大学受験を控えた阿良々木暦。しかし勿論、何ごともなく静かに過ごせるわけはなく。


「こんばんは、鬼いちゃん」
「ああ、こんばんは」


 その部屋には新たな同居人がやってくる。


「いや、鬼いちゃん。僕は鬼いちゃんとラブったりコメったりするためにこの家に来たわけじゃないんだよ」
「でも、僕との関係性を強くする必要があるんだろう?」
「それはそうなんだけど」


 そして訪問者は一人にとどまらず。


「あ、忍姉さん。ちーっす」
「その呼び方はやめよ」
 そして、まるで体育系部活動の後輩が先輩にするように挨拶をする斧乃木ちゃんに対してそう言うと、影には戻らずそのまま腰を落ち着けた。
「珍しいな、忍。斧乃木ちゃんと話しているときに出てくるなんて」
「ふん、曲がりなりにも同じ家に住んでいるのじゃからな。いつまでも避けているわけにもいくまいよ」


 それはなんてことのない、怪異と人間が同居している家での一幕。
 人と怪異が同居するために、試行錯誤する物語。



「兄ちゃん、大変だ!」
「たいへんだよ、お兄ちゃん!」
「どうしたんだよ、相変わらず騒がしい」
「事件だよ、お兄ちゃん!」
「事件なんだぜ、兄ちゃん!」
「うん、大学受験目前で受験勉強に励む兄の部屋に突入してきて騒ぐからにはそれなりの大事件なんだろうな。事と次第によっては兄として妹に制裁を加えねばならないぞ?」


 勿論、妹たちも黙ってはいない。


 裸Yシャツ友の会がお送りする、阿良々木家でのとある夜の話。


 文章:右近  表紙:名城月兔さん

 本文:A5二段組 38ページ
 頒布予定価格:500円

 本文サンプル(pixiv


 はい、今回も化物語ですよー。
 前回の本が妹に忍のことがバレる話だったので、その続編ってことでファイヤーシスターズと忍が一緒に暴れる話にしようと思ってたんだけど。あれー?
 いや、一応原作は読まないと色々問題があるよなと思って憑物語を読んでみたら斧乃木ちゃんがあんな感じで。書き始めてみたら大活躍だったよね! 不思議!
 時系列的には憑物語の直後ぐらいの予定ですが、例によって深刻なネタバレとかはないはずだから大丈夫です。多分。
 
 そんなわけで、12/31(月)は東ナ-40a「裸Yシャツ友の会」までどうぞ!
 今回はちゃんと化物語島に配置されたのである意味安心です。
 そして書店依託は例によって売れ残るか、何かの間違いでマッハで完売したら再販して依託依頼とかそんな感じで。
 他にも9月のシュタゲオンリーで作ったシュタゲコピー本の再版分とか寄稿なんかもしたので、その辺は同人ページを見ていただけるといいと思います。
 あと当日は依託も何個か受けると思うので、決まったらここにリンクを貼るんじゃないでしょうか。多分。


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