「先輩、わたしたちに麻雀教えてください!」
「おしえてー」
と、宮と静が揃って押しかけてきたのは、ある土曜日の午後。なんでも、「新しい刺激が欲しくなった」んだとか。
トランプにウノにオセロ、将棋にチェスに囲碁……と、寮内にあった卓上遊戯類はほぼ遊び尽くし、TVゲームやトレーディング・カードゲームも、この離れ小島では最新の物などそうそう入手できるわけでもなく。そもそもTVのチャンネルからして二つしかない――現在のつぐみ寮は、屋内で団欒の時間を過ごす娯楽にマンネリが生じている状態だった。
そこで会長に話を持ちかけてみたところ、俺を含めた去年寮内の男子がコッソリ賭け麻雀をやっていたのを聞きつけ――ということらしい。こんな機会でもなければ麻雀なんて一生縁がないと思われる宮に、元来好奇心旺盛な静。この二人が麻雀に興味を持つのは当然の流れかもしれなかった。
「麻雀だったら、会長だってできるぞ」
「え〜っ、そうなんですかぁ?でもどうせだったら先輩からがいいです」
「なおこ、厳しいからイヤ」
――そりゃまぁ、そうだろうなぁ。
俺はといえば、小さい頃から島のおっちゃんたちの中で鍛えられてきたし、寮の男子とも遊んではいたものの、今年になって寮の男子が俺一人になって以来、暫らく牌にも触っていなかった。寮の外で遊んで、万一学園側にバレたりしたら事だしな。久々にあの感触を味わうのもいいかもしれない。それに、可愛い女の子たちが「麻雀教えて」と懐いてくるのは、そそるものがある――分かる奴だけ分かれ!
「……言っとくが、俺は俺で厳しいぞ」
「はいっ。承知の覚悟です、師匠!」
「だいじょーぶ、まかせろししょー」
「よし、ちょっと待ってろ。部屋へ行って必要な物持ってくるから」
自室の押入れから牌のセットとマット、そして初心者向けの解説本を発掘してリビングに戻ると、弟子志願者が一人増えていた。
「航〜、あたしにも教えてよ、麻雀」
「凛奈……なんで?」
――意外な奴が食いついてきたもんだ。
「何となく面白そうじゃない?それに雨が降ったときなんかにできる遊びは、一つでも多いに越したことないし」
「そりゃぁそうだが……頭使うぞ?」
「失礼ね!航にできるくらいなんだから、あたしにだってできるわよ!……多分。それとも、後で実力をつけちゃったあたしに負けるのが怖いの?」
がなり立てた後にニヤリと笑う凛奈――多分虚勢だろうが。しかし凛奈の理由は分かった気がする。一つでも俺と勝負するネタが欲しいらしい。
「……教えてる途中で逃げるなよ」
「今日のうちだけは、師匠面させてあげるわ」
「――とまぁ、基本はこんなところだ。凛奈、大丈夫か?」
「ん〜……だ〜いじょうぶ、だいじょぶ。ちょっと疲れたけどね」
――頭から煙が出てるな。こいつにしては珍しく自分から頭脳労働に臨んだんだ、無理もない。
「後は遊びながら追々覚えればいいし、慣れの問題もあるからな。少し休憩入れたら、試しに一戦やってみるか」
ここまでの時間は約90分。日も大分西に傾いてきたし、一息つくには丁度いい頃合だろう。
「で、先輩?一つ、肝心な質問があるんですが……」
「何だ宮?」
宮の様子がちとおかしい。顔を赤らめ、モジモジとしている。まさか「質問」って――
「あ、あのですねぇ、まさかとは思うんですが…………脱ぐんですか?」
「……へ?」
――あまりにも予想通りの質問だったので、逆にビックリして間の抜けた返しをしてしまった。
「だからぁ!『一つの局ごとに負けた人が服を一枚脱ぐのって、正式なルールで決まってるんですか?』ってことですっ!何度も言わせないでくださいよぅ、恥ずかしいじゃないですか」
俺が質問の意図を理解していないと勘違いしたか、わざわざ解説する宮。こういう偏った物事だけは知っている辺り、本当にお嬢様育ちか疑わしくなる。
「ちょっ?!そんな……冗談だよね?」
「……?」
慌てる凛奈に、多分何も分かっていない静。そして俺は、教える立場の人間として、厳かに告げる――
「あぁ、そうだ。麻雀は脱衣が正式なルールだ」
――いけない先輩を許しておくれ、宮。
「んなわけあるか!」
がすっ
……ハッ?!一瞬意識が飛びかけた。俺の背後から、延髄に鋭い手刀でツッコミを入れてくれたのは、会長だった。
「あんたはどこのお兄ちゃんだ……全く、あたしが目を離した隙に何調教しようととしてるんだか。あんたたちも、こんなあからさまなの信じるんじゃないっての」
「あ、あはは〜、そうだよね。ちょっと考えれば分かるよねぇ……面目ない」
「やっぱり違うんですか……それはそれでちょっと残念ですねぇ」
「しずはべつに服ぬいでもいいよ〜……んしょ」
「静ちゃんっ?!だからって今ここで脱がなくてもっ?!」
「そもそも脱ぐ必要ないし」
「……てか、航がいる前で脱ぐな」
――男の浪漫は潰えたか。
それはともかく、さっきの一撃で朦朧とする頭を振りつつ、今度は会長に話を振ってみる。
「――というわけでさ、これから実戦練習やるんだけど、会長もどう?半荘2着か3着抜けで交代して、卓に入ってない間は軽く後ろからアドバイスしてやるってことで」
「そうね……航にイカサマとか点数計算の誤魔化しをさせるわけにはいかないから、入っておきましょうか。このメンツなら、気兼ねや遠慮は要らなさそうだしね」
「おい、人聞き悪いな。せめて『一人勝ちさせるわけにはいかない』くらいにしといてくれよ」
「あのぉ……お二人の話を聞く限り、奈緒子先輩って、先輩に匹敵するくらいお強そうな感じがするんですが……」
「あぁ、家族麻雀とかパソコンのアプリケーションとか、嗜み程度よ」
おずおずと尋ねる宮に、しれっと答えて見せる会長――『嗜み程度』?
前に一度だけ、会長が寮の男子に混じって卓を囲んだことがあった(勿論そのときは賭けなしだが)。そのとき俺は「慣れてないから、お手柔らかにね」などと言う会長のサポート役として後ろについていたんだが……俺がしたことといえば、せいぜい「これでどうかなぁ?」と(俺にとっては)明らかな演技で確認を求める彼女に頷いてみせただけ。殆ど俺は不要なんじゃないかと思えるくらいの手堅い打ちっぷりで、最終的にはちょっとだけ負けて他の男子を喜ばせる、見事なまでの接待麻雀を展開していた。後になって二人だけのときに、「もしあんたと打つ機会があったら、ボコボコに凹ませてあげるから、覚悟しときなさい」と言われたのを今になって思い出し……ちょっと背筋が寒い。
「レートはどうする?点1くらいだったら安いからいいよな?」
「お〜い副会長、生徒会長と副会長が率先して学生寮で賭け麻雀なんて、許されるわけないだろ」
「じゃぁやっぱり脱ぐしか……」
「なんでそうなるんですか?!」
「しずは脱いでもいいって言ってるのに……」
「ダ〜メ!現金の遣り取りや脱衣は禁止!じゃないとわたしが入れないじゃんよぉ」
「流石に教師のいる前でそこまでは無理か……って、さえちゃん?!」
ちょっと揉めてたところに、さも初めから居合わせていた様に会話に入ってきたさえちゃん。
「流石に現金とか脱衣は許さないけど、何か賞品か罰ゲームくらいあってもいいんじゃない?……いやぁ、TVゲーム以外で麻雀やるのなんて初めてだから、楽しみなんだよね〜」
「……」
「……」
「……」
「おい、教師兼寮長……」
本来なら止める側にあるはずの人物の立場を忘れた発言に、呆れ返る一同――あ、会長がキレそうになってる。このままじゃ麻雀の企画自体がポシャりかねない。これ以上こじれる前に、俺は平和的かつそこそこ盛り上がれるであろう案を提示することにした。
「ただいまー」
「駄菓子をこれだけ大量に買い込むってのも、ある意味贅沢よね〜」
「これだけ買って、一人千円ちょっとしか使ってないんですから、驚きです」
「……というか、流石にこれだけあると、見るだけで胃もたれ起こしそうね」
「あたしも全部食べるのは無理だなぁ」
「いや、一度に食わなきゃいいだけだし。そもそもお前、全部分捕れるなんて思うなよ?」
気分転換と「賞品」確保を兼ねて俺たちが向かったのは、永森屋商店――島の駄菓子屋。寮に帰ったのは、夕陽が沈んでそろそろ空の大半が暗くなってきたかという時分。
俺が提示した案とは「駄菓子を点棒の代わりにして争奪する」というもの。
1.う●い棒や麩菓子等、1つ約10円のお菓子を千点棒に見立て、30個入り業務用パック1袋(つまり千点×30で3万点)を各半荘の初期持ち点とする。
2.上がったプレイヤーは、計上された点数に相当する分のお菓子を、他のプレイヤー(ツモなら他の全員、ロンなら振り込んだプレイヤー)から奪うことができる。
3.100点単位については端数切り上げ(つまり2人テンパイのノーテン罰符は1500点→お菓子2つ)。なお、面倒なので本場は計上なし。
4.点数を支払う場合、自分の持っているどのお菓子を渡すかは、現所有者の任意とする(つまり、「人から奪ったお菓子から先に放出してもよい」ということ)。
5.リーチやチョンボの際も、点棒相応のお菓子を卓上に献上する(邪魔にならない範囲で配置)。
6.半荘中に自分の手元にあるお菓子は、いつ食べてもよい。勿論、食べた分だけ持ち点は減る。
――これは、去年まで寮内で麻雀が行われていたときに、軽い遊びとして度々適用されていたルール。しかしながら、各々違う種類のお菓子(う●い棒等の味違いは、それぞれ一種類扱い)を用意することで、勝負中の駆け引きがそこそこ熱くなる(ツモ上がりなら色んな種類のお菓子をもらえるし、特定の一品が欲しければロンで直撃を狙う、等)。かつ、あらかじめ参加料みたいな感じでお金が物品に置き換わっているし、単価が安いのでトラブルにもならない(遊び終わった後に分配や交換をするのは自由なので)。
以上のルール及び方針は、すんなりと承認された――なんだかんだ言いつつ、皆妥当な落とし所を探していた様だ。
各自4半荘分戦えるだけの駄菓子を用意――う●い棒各種にど●ど●焼き、麩菓子にミニヨーグルト、エトセトラ、エトセトラ……これだけ揃うと壮観というか圧巻、いやむしろシュールだ。何度見ても見慣れない。
「よし、それじゃぼちぼち始めるか」
――かくして、親父さんの世話のために実家に戻っている海己を除いたつぐみ寮生による、駄菓子争奪の麻雀大会が開始されたのである。
じゃらじゃらじゃらじゃら……
――四角いマットのジャングルに、今日も嵐が吹き荒れる。
学生寮であるところのここ、つぐみ寮に、勿論全自動卓などあるはずもないので、リビングのコタツの上にマットを広げ、手で牌を混ぜて積むことになる――いや、積み込みとかやんないぞ。ツ●メ返しとか。手が小さかったり、不器用だったり、力の加減が利かなかったり、単にドジだったり……と、実戦初体験のメンバーが、度々掴んだ牌を崩してしまうのはご愛嬌。
無論、麻雀は4人で卓を囲む遊びなので、毎回2人余りが出るわけだけど、今回は初心者講習も兼ねているので、空いた2人はギャラリーとして見学したり、障りのない範囲でアドバイスをする等、決して完全に暇になってしまうわけではない。慣れてないメンツが、度々解説本を確認したり、助言を求めたりとかするので、割と流れはスローペースだ。
「チー」
俺の左手(上家)に座る会長が、さえちゃんが捨てた3索を鳴いて、「2・3・4索」の順子を晒す。会長、2巡前に宮から發をポンしてたな。捨て牌を見ても、割とあからさまっぽいけど……初心者もいることだし、世間話に見せかけて軽く警報鳴らすくらいなら、許してもらえるだろう。
「会長、菜食主義に目覚めた?」――俺、余裕の9筒切り。会長は「さぁ、どうだったかしら?」とすっとぼける。
「先輩、それは奈緒子先輩に対して失礼じゃないですか?わざわざそんなことしなくても、奈緒子先輩はスリムでお綺麗じゃないですか」――宮、1索切り……2・3・4で晒してるとはいえ、アブねぇな。
「それとも星野、あんた、久々の麻雀に浮かれてボケ入ったんじゃないの?浅倉、昼も美味しそうにハンバーグぱくついてたじゃないの……全く、憎ったらしいくらいに肥満とは無縁なんだからさぁ」――さえちゃんよ、幾ら自分が要らないからって、ここで7索切るか?……いや、むしろよく通ったというべきか。
「あ……」「……」――外野の凛奈と静が息を飲む気配。どうやら二人には分かったらしい。
「はぁ……会長?」
「……分かったわよ。ただし、今回だけよ?」
「?」「星野?浅倉??」
溜息をつく俺に、会長が渋々といった感じで許可を出してくれたので、理解していないと思われる宮とさえちゃんに解説してやることにする。
「会長が公開している牌と捨ててる牌をよく見てみろ。何か気付かないか?」
「ん〜?……げ、まさか……」
「確か『緑一色』って、役満、でしたよねぇ……?」
「やっと分かったか。だから『菜食主義』って言ったろ?最低でも『發・混一色』までは警戒しておかないといかんだろうに。上がられたら大損害じゃ済まないぞ……俺もこのう●い棒サラミ味は惜しいしな」
「そ、そうですねっ。何としてもこのチョコパフバーは死守しなければ!」
妙に生真面目な返答をする宮。麻雀と同じくらい駄菓子が珍しいんだろう。
結局この局は、さえちゃん一人がテンパイ(あの遣り取りの時点で既にテンパっていた)、会長はノーテンだった。
「折角初心者ばかりで丁度いい機会だから、役満狙ってみたのに……」
えげつないな、会長。ヘタに決まってたら、初心者にはトラウマもんだぞ……
数回を経て、別の半荘。
「リーチ!」
力強く宣言し、卓上に塩羊羹を置く。
「嘘っ?!」「わたる、はやい〜」「まだ3巡目だよぉ〜?!」――凛奈、静、さえちゃんが口々に悲鳴を上げる。
はっきりいって、今回は自信がある。配牌がツイていた。巡目が早いので待ちを読まれにくいし、上がれば『連風・チャンタ・ドラ3』までは確定――脱衣がないんだから、このくらいまでは楽しませてもらわないとな。
「あ、せんぱ……」「航、早すぎるのも、それはそれで嫌われるわよ?」――さりげなく失礼な台詞を吐く会長は無視。宮が何か言いかけた様だが、今は目の前の状況の方が大事。
凛奈、俺の捨て牌を確認してから、渋々といった感じで5萬切り。静もそれに習う。まぁ、一発は回避したいところだしな。
「ゔ〜、どうしよう。安全牌がないよ〜……えいっ」
悩んだ末にさえちゃんが切ったのは西――ちっ、セーフか。流石に3巡目だし、悩むのは当然。これ切って当たったら事故と諦めるしかないだろう。
さぁ、肝心なのは今度の俺のツモ。一発が決まれば……来た、カンチャン8索!
「ツモ!『リーチ・一発・ダブ南・チャンタ』、ドラはとりあえず3つと裏は……」
「あのぉ、先輩?大変申し上げにくいのですが……」
「……ん?どした、分かんないか?」
手配を倒して公開し、ルンルン気分で指折り役を数える俺に、宮が水を差す。
「いえ、そうではなくてですねぇ……」
「航、アンタ浮かれすぎ。手配をよく見てみなさい」
会長の冷ややかな一言に、改めて晒した手配を確認してみる――
白×2、南×3、1筒×3、7・8・9索(8索がツモ)、1・1・3萬
――あれ?なんで最後が面子になってないんだ?ひょっとして俺、萬子の漢数字を見間違えた?これって、つまり……
「あ……!」――呆気に取られた風の凛奈。
「……星野?」――ジト目のさえちゃん。
「わたる、チョンボ〜」――無表情ながら、楽しそうな声色の静。
「見事なまでの反面教師振りですね、師匠。狙ってやったんじゃないかと思えるくらいです」――あくまで神妙な面持ちで、辛辣な追い討ちをかけてくる宮。
「はい、確認が済んだところで……ほら、いつまでも硬直してないで、大人しく罰符を献上しなさい、航」――会長のとどめ。
「うわぁぁぁっっ!やっちまった〜〜〜っっ!!」――そして、俺の断末魔の絶叫が鳴り響いた。
俺たちはこの後も、入れ替わり立ち代わりで、夜更け過ぎまで半荘を重ねた。俺がチョンボで調子を崩したことに加えて、いつの間にか年長4人にアルコールが入り、年少組は眠気を突破してハイな状態に突入したことで、結構荒れた麻雀になった。
それでも、一晩遊んで皆そこそこのレベルにまでは成長したんじゃないだろうか。少なくとも寮内で遊ぶ分には問題ないだろう。その意味では、初心者講習としては成功したと思いたい。
――俺のプライドという代償は高くついたけどな。
「みんな、ただいま〜……あれ、誰もいないの?おかしいな、靴は全員分玄関にあったのに……え?」
「よぉ海己、お帰り……」
「ちょっ……みんなどうしたの?!」
――海己が驚くのも無理はない。実家で一晩過ごしてつぐみ寮に帰ってみれば、リビングルームに横たわる死屍累々……
「んあ゙〜〜、頭痛いぃ……」
「うぅ、このあたしとしたことが……嘘っ、吹き出物?!」
「あれ……なんであたし下着だけになってんの?!」
「お腹は空いてるのに胸焼けがします〜」
「くぅ……すぅ……」
……あの後、度重なる頭脳労働+ハイテンションからくる疲労感と、駄菓子を貪り続けた満腹感から発生した眠気に耐えられず、いつの間にやら皆揃ってコタツを囲んで雑魚寝状態のまま一夜を明かしてしまった。卓上には無秩序にばら撒かれた麻雀牌、周囲に散乱した駄菓子のパッケージ、室内にはその中に入っていた物の臭いが混じり合って漂い……うゎ、当事者の俺でも退きそうな、退廃的というか、ダメな光景だ。
「これって……どういうこと?航が麻雀させたの?」
「いや、宮と静、それから凛奈が『教えてくれ』ってせがむもんだから、『折角だから皆でやろう』ってことになって……マズかったか?」
「別に麻雀自体は悪くないけど……でも折角作り置きしておいた昨日のお夕飯、全くの手付かずだし……それなのにそんなに駄菓子いっぱい食べて……わたしがいない間に……酷いよみんなぁ……ぐすっ……」
「うわぁぁぁっっ?!悪かった、謝るから泣かないでくれぇっ!皆からも海己に謝ってくれよぉ……」
結局、昨夜の夕飯を食べなかったこと、リビングを散らかしたこと、そして(わざとではないにしても)仲間外れにされたことの罰として、その日一日、もはや飽きが入り始めている駄菓子の残り以外の食事抜きという罰を、麻雀参加メンバー全員が海己から申し付けられることになった。
その後、何とか機嫌を直した海己に、俺がマンツーマンで麻雀指導をすることになったんだが……妙に嬉しそうに見えたのは、気のせいだったんだろうか?
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