裸Yシャツ 〜武道家二人の修羅場の場合〜


 海鳴市の郊外にある女子寮さざなみ荘。ここには個性的な住民が住んでいる。
 住人はそれぞれ有り余らんばかりの個性と、変わった特技を持っており、時にはそれを活かし合い、毎日騒がしく、そして楽しく過ごしている。

 そんな寮の管理人、槙原耕介。
 いや、管理人というよりコック兼雑用と言った方が正しい気もするが。

 さておき、そんなさざなみ寮での夜。
 耕介は自分の部屋にいた。
 しかし彼の両側には、裸にYシャツ一枚と言う裸と大差ない格好をした女性が二人寄り添っていた。

 二人とも私立風芽丘高校二年生。
 片や同校剣道部、期待のエースでありながら、人知れず災いを成す霊障を収めるため、霊剣十六夜を振るい、悪霊を祓う少女。破魔真道剣術神咲一灯流伝承者、神咲薫。
 片や同校護身道部の部長で、全国大会で見事優勝を遂げた耕介の元恋人、千堂瞳。
 そんな特殊な経歴はあるものの美しい女性二人によりかかられつつ、耕介は悩んでいた。

 「どうして、こんなことになったのだろう……」

 そう。事の発端は半日ほど前にさかのぼる。


 「お誕生日、おめでとーっ!!」
 パァン!パパパパパァン!!
 クラッカーが盛大に鳴り響き、そこにいる全員からお祝いの言葉が投げかけられる。

 「みんな、ありがとう」
 耕介は満面の笑みを浮かべ、そこにいる全員にお礼の言葉を言う。
 そりゃあそうだろう。この寮は女子寮なので、住人は当然女子である。
 耕介も健康な男なのだから、女性にかこまれて嬉しくないわけが無い。

 「ほら飲め、耕介。このあたし秘蔵の酒だ」
 真雪が一升瓶片手にやってきて、耕介の隣に座る。
 「うわ、本当っすか?ありがとうございます」
 耕介がコップを出すと、そこにトクトクと音を立て、透明の液体が注がれていく。
 「あ、ほら。真雪さんも」
 「お、さんきゅー」
 トクトクトクトク……
 二人で注ぎ合い、飲む。
 「くっ……はー」
 「利くぅー!」
 さすがに真雪が「秘蔵」というだけあってかなり美味い。
 「ほら耕介、どんどん飲め。今日はお前が主役だ」
 「おっととと。ありがとうございます」
 いつになくやさしい真雪と共に、酒を飲む。この瞬間の幸福感は酒飲みでなければわからない。

 「なーに二人で、さしつさされつしてるのよう」
 「おわっ!」
 突然、背中に重みとやわらかさを感じる。振り返って見ると、学校帰りにこのパーティーに寄ってきてくれた瞳がのしかかっていた。
 「何言ってるんだよ瞳。ほら、離れろって」
 そう言って押しのけようとする。
 「いやーん。離れたくなーい」
 そう言って、顔と身体をすりすりとすり寄せてくる瞳。その顔は真っ赤に染まっていた。
 と、言ってもどう見ても恥ずかしがって照れているわけではない。
 背中に抱き付かれているのだから瞳の息が自分にかかるのだが……酒臭い。どう見ても酔っている。

 「真雪さん! 未成年に酒のませちゃ駄目じゃないですか!」
 「何言ってんだ。あたしゃついさっきまで、お前と二人で飲んでただろうが」
 普段の癖でこういう場合の第一容疑者に、つい文句をつけてしまったが、言われてみるとその通りである。
 と、すると詰問すべきは第二容疑者だ。
 リビングの向こう、丁度、瞳が座っていたあたりを見てみると、第二容疑者―椎名ゆうひが、背中の後ろに酒瓶を隠すところだった。
 「まあまあ、めでたい席なんやし。ここは一つ、無礼講いうことで」
 「お前かぁっ!」
 「やーん、堪忍やー」
 逃げるゆうひを追いかけようしたが、瞳が依然として彼の身体に抱き付いたままだったため、耕介は思うように動きが取れなかった。

 「あー、瞳。ちょっと離れてくれると、非常に助かるんだが」
 そう言ってみるが、瞳は全く聞き入れる気配も無く、ぷぅ、と頬を膨らませて反論する。
 「なによぅ。耕ちゃんは、私に抱きつかれて不満なわけ?」
 「いや、そういう問題じゃなくてな」



 そのころ薫は、丁度、耕介と瞳の二人を挟んだテーブルの反対側で、黙々と料理を食べていた。
 まあ、普段からあまり陽気に騒ぐ方ではない娘なので、誰も違和感を感じてはいないようだが。
 それに気付いたのか、先程まで耕介のそばにいた真雪が一升瓶片手に薫の傍に近付いたかと思うと、薫の隣におもむろに座った。
 「どうした、神咲ぃ?」
 「何でもなかとです」
 いつものにやにやした笑みを浮かべ問い掛ける真雪に対し、薫もいつも通りそっけなく答え、コップに入っていたコーラをぐっと飲み干した。



 そんな二人の様子に全く気づかず、耕介と瞳はべたべたしていた。
 と、いうより瞳が一方的に耕介にべたべたしていた。
 「しっかし二人とも、ほんまに仲ええなあ。うらやましいわー」
 「そうだよねー。二人とも背高いし、本当にお似合いって感じ」
 微笑ましげに瞳と耕介を見つめ、ゆうひと知佳が感想をもらす。
 「何言ってんだ、二人ともっ! いいから瞳を剥がしてっ! 知佳、『力』使ってもいいからっ!!」
 耕介はしがみついた瞳を剥がせないまま二人に声をかけるが、その意見に耳を傾けるものは誰もいなかった。
 「せやけど、瞳ちゃんと耕介君って、前は付き合ってたんやろ?」
 「ええ。それはもうらぶらぶでした」
 ゆうひの問いに、瞳がまじめな顔で答える。
 「昔の話です。昔のっ!」
 当然、耕介の反論に耳を貸すものはいなかった。



 「良かったな神咲。昔の話だってよ」
 「だから関係なか、と言うとるでしょ」
 冷やかす真雪を前に、薫は声を荒げることこそなかったが、無愛想な表情のまま、また手にしたコップの中身を口に含んだ。



 「でも耕介君。こんな美人な彼女と、なんで別れたん?」
 「いいだろ別に!!」
 ゆうひの無情な問いがなおも続き、もはやヤケ気味になりつつある耕介は思わず叫んでみたものの、誰一人聞き入れる様子は無かった。
 「えー、聞きたい聞きたいー」
 「ほら、かわいい妹の頼みは、聞かなあかんよ」
 「千佳ぁ〜」
 ゆうひに加え、可愛い妹分である知佳まで参加し始めた。
 思わず泣きそうな声になった耕介をよそに、瞳がさらっと言い放つ。


「ああ、原因はね。耕ちゃんが、私に襲い掛かったっから」


 ぶぶぅっ!!
 凄い音を立てて、薫が飲みかけたコーラを、全部吹き出す。
 薫の側にあった料理にかかってしまったが、誰一人としてそんなことは気にしていなかった。

 「耕介……」
 「お兄ちゃん……」
 「こーすけ……」
 「耕介さん……」
 「耕介くん……」
 「耕介さん……」
 「耕介……」
 「みゃー」
 「にゃー」

 その場にいた全員が一瞬凍り付き、耕介の方に非難の目と、侮蔑混じりの呼びかけを向けた。

 「ちょっと待て、未遂だ、未遂っ!」
 慌てて耕介が立ち上がり、両方の掌をぶんぶんと振りながら否定した。
 だが、そんな耕介の動揺混じりの挙動に反し、あまりの勢いに、思わず振り落とされた瞳が、ぼそっと口を開く。

 「そうよねぇ。私にあっさり投げ飛ばされたんだから」
 「なーんだ」
 「だっさぁ」
 「根性ねぇなあ」
 「うるさいなあ! あのころは若かったんだよ!」
 今度は一転して、非難に転じた面々の言葉を遮るかのように耕介が絶叫する。
 そんな中、何事か思いついたかのように真雪が問い掛ける。
 「つーか、千堂さん中学生だろ? そのころ」
 「ええ、それなのに耕ちゃんったら、か弱い私に無理矢理……」
 そう言って瞳は両手で目を覆い、よよよ、と泣き崩れる。いや、泣き崩れるふりをする。

 「うっわー、耕介君……ロリコン?」
 グサッ!
 ゆうひの容赦無いツッコミが飛ぶ。

 「つーか、犯罪だろ、それ」
 グサグサッ!!
 さらに真雪の追い討ちがかかる。

 耕介は胸を押さえ、前のめりに倒れてしまう。

 「あ、死んだ」
 「おーい、こーすけー」
 知佳と美緒がしゃがみこみ、つんつんと突つく。

 ……へんじはない。ただのしかばねのようだ。

 「でも、私ももう子供じゃないの。今なら、耕ちゃんの気持ちを受け入れられるようになったのよ」
 瞳は静かにそうつぶやき、また耕介の方に近づいてくる。微妙に目が、据わっていた。
 そして、おもむろに耕介のTシャツに手をかけ、ずりあげようとする。

 「ちょ、ちょっと待て。何する気だっ!」
 突然の出来事に思わず大声を出す耕介。
 それを聞くと、瞳が照れたように言う。
 「だめよ耕ちゃん、女の子にそんなこと言わせちゃ」
 そうのたまいつつも、手は全く止まっていない。
 「そやで、耕介君。せっかく女の子のほうから、勇気出して言うてるのに」
 「ゆうひ! お前酔ってるだろ!」
 「はいはい、お子様は見ちゃ駄目だぞー」
 「えー」
 「ぶーぶーなのだー」
 そんな状況を見て、さも冷静そうに、真雪は、知佳と美緒を追い出しにかかる。
 「真雪さんもそんなことしてないで!」
 「ん? 見られた方が燃えるか?」
 「そうじゃ無くてっ!」


 そんな騒ぎの中も瞳の手は止まらず、Tシャツの命が風前の灯火となり、続いてズボンのベルトに手がかかった時。

 ドン!!

 突然大きな音が立ち、思わず静まりかえる。そこにいた全員がそっちの方に目をむけると、手に持っていたコップをテーブルに叩き付けるように置いた薫がいた。
 足元には空になったコーラのペットボトルが転がっている。
 一同が注視する中、薫はコップを置いてゆっくりと立ち上がり、側に置いてあった木刀からカバーを外す。

 「千堂、うちと勝負じゃ」
 言って木刀の先端を、瞳(と耕介)の方に向けた。
 「え?」
 さすがに何がなんだかわからず、唖然とする瞳と、彼女に襲われる直前の耕介。
 「このうちの目の前で、そげなふしだらなことをしようとするなら、うちを倒してからにせんかい!」
 と、薫はそこまで一気にまくしたてると、そのままずかずかと二人に近づき、木刀の先端を耕介の眼前につきつけた。
 先ほどまでの、ある意味和やかだった危機から、直接的な命の危機に瀕し、耕介は言葉を発することが出来ずに、あわあわと口を開閉する。
 周りの面々も声を上げることが出来ず、静まり返った空気の中、時計のカチコチと言う音だけが響く。
 誰も動けずにいる中、瞳が片手で木刀をつかみ、耕介からそらす。
 そして、何かを悟ったような顔付きを浮かべると、ゆっくりと立ち上がった。その表情には、それまでの無邪気な顔は感じられない。

 「いいわよ。いつかは勝負をつけなきゃいけない、と思ってたしね」
 瞳は静かに微笑みながら薫の方に視線をくれ、そう言い放つ。
 その言葉を合図にしたかのように、二人はばっと離れ、間合いを取る。
 緊迫した空気に静まり返る、さざなみ荘。

 薫は握った木刀を両手で構え、瞳は素手のまま、油断無く構える。そして両者が睨み合った。
 事の発端になったであろう耕介はというと、この状況を打開しようと色々思索するものの、
 あまりに緊迫した空気に声を出すことが出来ずにいた。

 「こらこら。こんなところでやりあったら、迷惑だろうが」
 突然、真雪が二人に声をかける。
 「仁村さんは引っ込んどってください。これはうちらの問題です」
 「ええ、すいませんけど、真剣勝負に割ってはいると怪我をさせるかもしれません」
 二人とも全くもって聞く耳を持たず、なおもじりじりと間合いを詰める。
 予期しなかった真雪の言葉に力を得たように耕介がやっとのことで声を絞り出す。
 「そうだ、真雪さんの言うことが正し―」
 「やるんだったら、着替えて表でやれ!」
 耕介の言葉を遮るように、真雪が凛と言い放つ。
 「いや、真雪さ……」
 ボスッ!

 真雪の目にもとまらぬ速さの肘打ちが、寸分違わず耕介の鳩尾にヒットした。思わず遮ろうとした言葉を噛み含むように、耕介はううと唸って、意識を失った。
 そのまま意識を失う耕介が最後に聞いたのは、二人の「わかりました」という声だった……。



 「ううっ……」
 耕介が意識を取り戻した瞬間、視界に飛びこんできたのは縁側の板だった。
 そのまま庭の方に目をむけると、瞳と薫が、真剣な眼差しのまま、向き合っていた。
 二人とも古式ゆかしい袴姿だが、瞳は恐らく部活で使っているものであろう道着姿で、薫は退魔服姿だ。
 瞳の手には護身道で使われる硬化ウレタンの棍ではなく、同サイズの木の棒が、そして薫の手には、いつも練習で使っている木刀が握られている。
 両者の視線には、いつもの仲のいい友人をを見る時の優しさはなく、互いに鍛えた武道家を見る、殺気交じりの視線であった。
 しかも、「練習試合」「手合わせ」と言うようなものではなく、あきらかに「真剣勝負」の目付きである。
 まるで、辺りの空気が目に見えない質量を持ったかのような、そんな危うい空気の中、誰一人として動けないでいた。

 耕介が身体ごと起き上がった時、「ギシッ」と板張りの縁側がかすかに音をたてる。
 まるでそれが合図であるかのように、二人が動いた。
 互いに何かに弾かれたように走り、間合いを詰める。
 「いやあぁぁぁぁっ!!」
 薫の裂帛の気合と共に木刀が振り下ろされる。しかし、瞳はそれを棍で難なく受け流し、そのまま流れるような動作で棍による攻撃を行う。
 それをまた、すばやい動作でかわす薫。そのまま矢継ぎ早に、互いの攻防が繰り返されていた。


 「やるなあ、瞳ちゃん」
 のんびりとした感想を述べる真雪に、耕介が食って掛かる。
 「やるなあ、じゃないですよ!何やってんですか、いったい!!」
 「決闘」
 さも当然と言った感じで言う真雪に、思わず耕介の力が抜ける。
 「いや、そういう事を聞いてるわけじゃなくて!」
 なおも猛然と反論する耕介の肩をぽんぽんと叩き、ゆうひが声をかける。
 「ええやんええやん。愛する男をかけての決闘やでー。めっちゃかっこええシチュエーションやーん」
 「いや、そういう問題でもなくてっ!!! ……え?」
 反論を続けようとする耕介の言葉が止まる。

 「なんやの耕介君、鳩が豆鉄砲食ろたような顔して」
 「いや、愛する男って……誰のこと?」
 「何言うてんの。この場に耕介君以外に男の人おらんやん」
 素っ頓狂な表情のまま、口をぽかんと開ける耕介に、ゆうひは両の手を上にあげて、呆れたような口調で、実にあっけらかんと、そう言った。
 「え、えええええええっ!!??」
 あまりのことに驚く耕介。
 「お前以外、全員知ってるぞ?」
 真雪のその言葉を聞き、周囲にいる面々を見回す。

 「耕介さん、気づいてなかったんですか?」
 「あ、あはは……かなり前から知ってましたー」
 「耕介も薫も、お互い、にぶちんなのだー」
 「まあ、薫も一応隠してたらしいから……」
 みなみが、知佳が、美緒が。さらにはリスティまでがあっさりと話す。
 思わずへこみそうになるが、なんとか立ち直る。
 「で、でも二人を止めないと! 怪我でもしたらどうするんですか!」
 心配そうな耕介に対し、みなみがいつもどおりの明るい口調で答える。
 「大丈夫ですよ。神崎先輩も千堂先輩も全国でも指折りの武道家なんですから手加減ぐらい」

 「えぇやぁーーーーーっ!!!」
 瞳の棍が振りかぶられ、薫の胴に向かって凄まじいスピードで振り抜かれる。
 しかし薫は、それを木刀で捌きそのまま突きを繰り出す。
 「ちぇぇぇぇぇっ!」
 ……のどに。
 瞳は寸前でその一撃をかわし、また大きく間合いを取る。

 「……今日は、してないみたいですね。手加減」
 汗を垂らしつつ、みなみが言葉を続ける。
 「薫さん、どうみても本気だよ?」
 「今日の薫、すっごく怖いのだー」
 「一体どうして……」
 あまりの気迫、というよりもはや殺気に近いものにそこにいる全員が脅える。
 「ああ、あれな」
 誰もが緊迫してる中、真雪からいつも通りのんびりとした口調で声がかかり、いっせいに全員が振り向く。
 「こんなこともあろうかと、神咲の飲んでたコーラに酒を混ぜておいた」
 「あんたはあっ!!!!!」

 そうこうしている間にも一進一退の攻防は続いていた。
 休み無く続く戦いのせいか、それともまわってきた酒のせいかはわからないが、二人とも息が上がってくる。
 顔はすでに、両者とも真っ赤だ。
 互いに攻撃を見切り、かわし続けてはいたが、そろそろクリーンヒットではないにせよ、傍目にも有効打と思われる打撃も増えてきた。

 「あー、そろそろ止めなきゃまずいかな?」
 「早くして下さいよっ!」
 あいかわらずのんきな声で言う真雪に対し、耕介がいらだたしげに叫ぶ。

 「ちぃええええええっ!!」
 薫が裂帛の気合と共に木刀を振り下ろす。
 「甘いっ!」
 その攻撃を棍で弾く瞳。その衝撃に耐え切れず棍はへし折れてしまうが、かまわず、そのまま薫の懐に入る。
 「もらった!」
 薫の腕を取り、投げの体勢に入る。
 瞳はこの瞬間を待っていた。遠距離から中距離での打ち合いでは木刀を持ち、実戦経験を詰んでいる薫にはかなわないが、木刀の間合いの中に入り、至近距離での格闘戦に入れば瞳の方がはるかに有利である。
 襟と袖をつかみ、完璧なタイミングで腰を跳ね上げる。そして、倒れた薫の腕関節を極める……はずだった。

 ずるっ。

 「あっ」
 いつのまにか日陰に入ってしまったのか。ぬかるみ気味になっていた地面に足を取られる。
 普通に歩きまわるぶんには気にならない程度の地面だったが、達人同士の闘いにおいてそれは致命的であった。
 結果として瞳は薫を投げそこない、そのまま膝から地面に倒れ込んだ。
 「これで終わりぃっ!!」
 倒れる瞳に向かって、薫の雄叫びと共に木刀が振り下ろされる。
 誰もが瞳が打ち据えられる状況を想像し、目をそらした。

 パキーン!
 しかし、悲鳴も打撃音も聞こえず、甲高い音が鳴り響いただけだった。

 カラン、カランカランカラン……

 その音と共に全員が目を戻すと、そこには木刀をへし折られて唖然としている薫と、突然のことに何も理解できない顔をしたまま、膝をついている瞳、そして愛用の木刀を持った真雪が何食わぬ表情でいる真雪がいた。
 「おお、さすが我が愛刀。傷一つついてねーや」
 自分の木刀を見て、感心したようにつぶやく真雪。
 その声を聞いて唖然としていた薫が我に返り、猛然と食って掛かる。
 「……に、仁村さん、邪魔せんでくだ――」
 「あー、うるせーうるせーうるせー」
 真雪は詰め寄る薫に面倒くさそうにぼやくと、事も無げに木刀で彼女のみぞおちを突いた。
 一瞬、呼吸が止まり、声も出さずに崩れ落ちる薫。
 「え? え? え?」
 まだ状況が理解できないのか、目を白黒させてる瞳。
 「ほら、あんたも」
 真雪は瞳のみぞおちにも突きを入れた。瞳は膝をついたままの状態から、後ろに崩れ落ち、尻餅をついた。

 「おい、耕介」
 まだ状況を理解しきれていない耕介に向かって真雪が声をかける。
 「え? ……は、はい」
 「後はお前が看護しな」
 「は、はい」
 反射的に肯定してしまう耕介。
 「はい、解散解散―」
 真雪にせっつかれ、そこにいた全員が自分の部屋に帰っていく。
 気がつくと庭にいるのは、耕介と意識を失った二人だけであった。
 「あ、あのー。誰か手伝ってくれないかなー」
 無駄だろうとは思いつつ、とりあえず寮の方に向かって呼び掛けてみる。

 無論、無駄であった。



 ずずずっ……ずずずっ……ずずずずずっ……
 二人を半ば引きずるように運び、耕介が汗だくになって体力が限界に差し掛かったあたりで、やっと部屋に到着した。
 部屋の中には誰が用意したのか、布団が二組敷いてある。

 「……」

 もう何を言う気も無くなり、二人を部屋に引きずり込み、布団の上に寝かせる。

 「ふうぅー」
 二人をおろし、ほっとしたように息をつく。
 「まったく、布団敷くぐらいなら運ぶの手伝ってくれてもいいのに……」
 ぶつぶつとつぶやきつつ二人の方を見る。

 「おおうっ!」
 思わず声を上げてしまう耕介。
 無理も無い。二人とも道着と退魔服と言う、和服に近い装いをしている。
 そして、激しい戦闘の後、耕介が大分不安定な状態で運んできたために胸の部分がはだけ、巻いたさらしはほどけかけ、胸があらわになりそうになっていた。
 瞳のふくよかな胸、そして薫のサイズこそ小さいがひきしまった胸。耕介の目にはそれが飛び込んできたのだ。

 「ぐびっ……」

 二人ともかなりきわどい状態であり、身じろぎ一つすればあっさり見えそうである。

 「い、いかんいかん。俺は看護するんだ」
 自分に言い聞かせるようにつぶやき、洗面所に向かい、タオルを数枚持ってくる。
 見た感じでは酷い打ち身などはなかったが、とりあえず耕介は、汗が凄い二人の身体を、タオルで拭くことにした。

 「とりあえず、瞳からかな……」
 やはり「元彼女」の分だけ、瞳のほうが看護しやすいと判断し、汗を拭き始める。
 とりあえず、手や首筋、顔と言った露出している部分を拭いていく。

 「さて、次はどうするか……」
 わかっている。さっきから瞳がはだけた胸元にも相当汗をかき、外気に触れているのだから
 早く拭かないと風邪をひくかもしれない。いや、ひくだろう。ひくにちがいない。ひかせるわけにはいかないさっ!
 耕介の頭の中で結論が出、風芽丘高校護身道部のエースであり、連続優勝を狙っている少女の体調を崩さないために胸元の汗をぬぐうことに決定した。

 「で、では……」
 右手にタオルを持ち、なんとなく正座したまま瞳の方に手を伸ばす。
 そろそろと、本当にそろそろと、カタツムリの歩みの方が速いのではないかと言う速度で瞳に近づいていく。
 考えてみると、昔付き合っていたと言っても瞳の肌(手や腕などは除いての話だが)に触れるのは始めてである。
 と、いうより触れようとしたら投げ飛ばされて骨折して入院した。
 そんなことを思い出しつつ、そろそろと瞳の豊かな胸の谷間にタオルを持った腕が伸びて行く……。

 「うぅん……耕ちゃん?」

 ババッ!!!!

 ……人間、いざと言う時には正座のまま跳躍できるという話を聞いたことがある。
 それは真実だった。耕介は正座したまま、部屋の隅の方まで飛びのいていた。

 「……ここは?」
 危ないところで気づかれてないようである。
 その反応にほっとし、心配そうな顔をして近づく耕介。
 「大丈夫か?」
 「あ、耕ちゃん……」
 やはりまだ目覚めきってはいないようだ。思わず心の中で胸をなで下ろす。三年前と比べて腕を上げ、技の威力も上がったであろう瞳に投げられるのはごめんである。
 とりあえず何も無かったことにして会話を続けることにした。

 「『あ、耕ちゃん』じゃないよ。お前、薫ちゃんを殺す気か?」
 瞳に強い口調で言う。胸に触ろうとしていた件はさておき、さっきは真雪が止めてくれたからいいが、さもなければ死は大袈裟としても、怪我は免れなかっただろう。
 「だって……」そう言う瞳には先ほどまでの強い目つきはなく、いたずらっ子が親にすがるような、そんな目で耕介を上目遣いに見つめる。
 (うっ……)
 普段、どっちかと言うと強気な瞳にそんな顔をされ、一瞬「ぐらっ」と来るが、意志力を振り絞り、後ろを向いて話を続ける。
 「だって、じゃないっ!!お前が護身道続けてるのは、人を傷付けるためなのか?」
 「だって耕ちゃんが……」
 「俺がどうしたって?」
 続けて強く言うが、瞳がまだ反論してくるので多少怒りながら振り向く。
 そこにいた瞳は、目を潤ませて今にも泣きだしそうだった。
 「お、おい、泣くなよ」
 慌てふためいておたおたとフォローを始める耕介。
 「だって、さっきから耕ちゃん、薫の話ばっかり」
 「別れてから何度も後悔したんだよ? それで、この前偶然再会して。すっごく嬉しかったのに……」

 普段、強気な瞳が涙を流しながら自分の思いのたけを告白してくる。
 今まで心の中に仕舞い込み、昔通りの関係を続けるために封じてきたものを。
 それを聞いたとき、耕介は思わず瞳をやさしく抱きしめていた。
 「耕ちゃん……」
 瞳は何が起きたのか理解できず、そうつぶやくのが精一杯だった。
 「もういいよ。すまない」
 耕介がすまなそうにそうつぶやくと、瞳も安心したように体を預けてくる。
 そして、どれくらいの時間が経ったのか。瞳はゆっくりと耕介から離れ、語り始める。
 「でも、もう私も子供じゃないの。耕ちゃんの思いを受けられるようになったの……」
 とさ、と。かすかな音を立てて瞳が布団に横たわる。
 「瞳……」
 耕介が近づき、上に覆い被さる。
 そして、二人の顔が少しずつ近づいていく……


 「千堂! なんばしよっとかあっ!」
 二人の世界を一気に破壊したのは薫の叫び声だった。
 はっと我に返り、止まる耕介。しかし、キス寸前のところまでいっていたことは逃れようのない事実である。
 「なによ、これからいいところなのにぃ」
 くすくすと笑い、耕介が上に覆い被さった状態のまま楽しそうに笑う瞳。
 薫の声で冷静になり、瞳の息を間近に感じて気づく。
 『全然酒が抜けてねぇ』

 「はよう離れんかいっ!」
 耕介がそんなことを考えていて、動かないのを見てとると、薫はいつのまにか手に持っていた十六夜をすらっと抜き放ち、切っ先を耕介と瞳に向ける。
 さっきは木刀だったのでさして問題はなかったが、今回は真剣である。霊剣とはいえ、人も斬れる。
 「か、薫、ちゃん?」
 引きつった笑みを浮かべ、薫に問い掛ける耕介。
 「何ですか? うちは全く酔ってません!」
 『嘘だあっ!!』
 耕介は心の中で絶叫し、瞳から離れようとする。
 しかし、起き上がる途中で瞳に襟を取られ、そのまま引き落とされる。
 「わぶっ!」そんな声とも悲鳴ともつかぬ音を口から発し、崩れ落ちる。
 見事に瞳に抱きすくめられた体制になった。自分の胸の下に瞳のふくよかな胸の膨らみがあり、実に気持ちがいい。
 『そうじゃなくてっ!』
 耕介はまた離れようとするが、びくともしなかった。抱きかかえるようなポーズであったが、
 見事に首を極められている。動けない。と、言うか、呼吸も難しい。むろん声など出はしない。
 「きさまぁっ!!」
 そんな二人を見て薫は逆上し、刀を構える。普段、霊達を相手にしている時よりも厳しい目。あきらかに怒りに燃える目だ。
 『殺されるっ!』
 耕介がそんなことを考え、子供の時に死んだ祖父のことを思い出していると、瞳が冷静に言い放った。

 「何よ、私と耕ちゃんが何をしようと薫には関係ないじゃない」

 その言葉に薫がぴたっと止まる。
 「う、うちの目の黒いうちは、この寮内でそんなふしだらなことはさせん!!」
 しばらくの逡巡のあと、やっとのように言う薫。
 瞳は変わらずいつもの口調で話しつづける。
 「じゃあ耕ちゃん、続きはうちでやろっか」
 「い、いかん!」
 『続きってなんだっ!続きって!!』
 まあ、聞くまでもないと思うが、耕介としては薫を少しでも刺激したくはなかった。
 声が出せないのでどうしようもなかったが。
 「何でよ、今度は何を不満なのよぉ」
 何かを確信しているかのように続ける瞳。
 「せ、千堂。お前、高校生じゃろうが。そんなことしたら学校辞めなきゃいかんぞ!?」
 なんとか反論するが、誰がどう見ても瞳の方が優位に立っている。
 「別に、耕ちゃんと一緒ならいいもん」
 『ちょ、ちょっと待て、俺はそんなこと言った覚えはないぞ?』
「だ、だけど、だけど……」
 耕介が動揺している中、状況は刻々と進展していく。
 その後も薫は何度か瞳を止めようとするのだが、さっぱり要領を得ず、話は進まない。
 時間ばかりがどんどん過ぎていく。

 二人が言い争うそんな中、耕介は
 『あ、おじいちゃん……』
 きれいな川の向こうに死んだ祖父を発見していた。

 「もういいわね? さあ耕ちゃん、私を好きにしていいのよ♪」
 そう声が聞こえたかと思うと、耕介の意識がはっきりする。

 むぎゅ。


 耕介の顔は瞳の胸に挟まれていた。
 『地獄から……天国?』
 そんなことを考えていると瞳の手が耕介の顔に添えられ、そのままゆっくりと引き寄せられる。
 そうして、段々と瞳の顔が近づいてくる……

 「うちの耕介さんに手を出したらだめじゃあっ!!」
 薫の絶叫と共に世界が止まる。

 自分が叫んだ言葉に今やっと気づいたかのように真っ赤になる薫。
 「やーっと白状した。ばればれなのに随分粘ったわねぇ」
 瞳が耕介を解放し、やれやれと言う感じで起き上がる。
 「あの、あの……」
 「かと言って、耕ちゃんを譲る気なんか全く無いけどね。親友としてフェアな勝負がしたかったから」
 そう言ってにっこりといつもの優しい笑みを浮かべる。
 「千堂……」
 薫も今までの「敵を見る目」から「親友を見る目」にかわり、瞳を見詰める。
 静かな空気が流れ、薫も落ち着いたのか言葉を続ける。
 「そうじゃな、うちも……」
 そう話し出そうとした瞬間、また瞳が抱きついてくる。
 「じゃあ、続きをしましょ」
 「千堂!きさん!」
 さきほどまでの友を見る目はどこへやら、薫はまたも刀を構える。瞳を見据える。
 薫の全身から発せられる殺気を感じ、飛びのいて間合いを取る瞳。
 「今度こそ、耕ちゃんをかけて真剣勝負ね……」
 瞳の目が細くなり、さっきの勝負よりもはるかに空気の密度が高くなり、はりつめる。
 まさに一触即発と言う状況で、このままだとどっちかが死ぬのではないかと言う雰囲気まで醸し出す。


 「い、いや、それは暴力で解決できる問題じゃないと思うぞ」
 そんな空気の中、やっとの思いで耕介が声を出す。さすがにこのまま親友同士に殺し合いをさせるわけにはいかない。
 その後の展開に備え、心の準備を整える耕介をよそに二人はお互いにみつめあい、返事をする。
 「そうね」
 「そうですね」

 『……へっ?』
 あまりのあっけなさに耕介も唖然とする。
 そして二人はうなずきあい、くるりと耕介の方を向いた。

 「「じゃあ、耕ちゃん(耕介さん)が選んで!」」

 二人の声がハモり、張り詰めた空気はそのままに耕介の方を見つめる。

 『しっ……しまったっ!!!』

 思わず凍り付く耕介。
 良く考えたら最終的にはこうなるのは目に見えていたのだが、さっきまでの命の危険を伴う空間においてはそんなことを考えている余裕はなかった。
 「私よね!?」
 「私ですよね!?」
 二人がずいずいと詰め寄ってくる。
 思わず後ずさりつつ、この状況を打開しようと色々な考えを巡らせる。
 しかし、何度考えても「二人のうち片方を選ぶ」と言う結論しか出ない。
 それはわかっているのだが、薫と出会って一年たっていないし、瞳に至っては再会してから半年も経っていない。
 もちろん二人とも魅力的であり、耕介も惹かれていたのを否定したりはしない。
 薫ちゃんも瞳も、二人とも魅力を感じるところをあげるときりがない。
 悩めば悩むほど泥沼にはまっていくような気がする。

 そんなことを考えながら耕介が悩んでいる間、二人はじっと待っていた。
 しかし、耕介がいつまでも結論を出せず、思い悩んでいるのを見て、瞳がすっくと立ちあがった。
 「わかったわ」
 そう言って部屋の扉を開ける。
 「千堂! 逃げるんか!」
 薫のそんな声を無視して、後ろ手に扉を閉め、部屋を出て行く。



 少し時間が経ったあと、耕介は思わずため息を吐いた。
 「耕介……さん?」
 薫がいぶかしげに聞くと、
 「いや、いつも優柔不断は行けないと思っているんだけどね。なかなか治らないもんだなあ」
 そう答えて自嘲気味に笑う。
 「耕介さん……」
 「薫ちゃんも、こんな情けない男は早く見限った方がいいよ。どうせ俺なんか……」
 「耕介さん!!」
 なおも自虐気味に言葉を続ける耕介を遮るように薫が叫ぶ。
 「え?」
 「うちは……うちは耕介さんのことを見限ったりしません。耕介さん、望ちゃんの事件の時にうちのことを助けてくれたじゃなかですか」
 「いや、あれは……」
 まだ何か反論しようとする耕介の言葉を遮り、薫は話しつづける。
 「それに、いっつも愛想の悪いうちのことを気遣ってもらって、よく話し掛けに来てくれるし、困った時は相談に乗ってくれるし……」
 「いや、でもそれは管理人として」
 「それでもいいんです。耕介さんがなんと思おうと、うちは耕介さんのことが大好きですから」
 そう言いきった後、顔を真っ赤にする薫。
 「す、すいません。うち……」
 「薫ちゃん……」
 そんな仕種がたまらなくいとおしくて、思わず薫を抱きしめてしまう。
 「耕介、さん?」
 「大丈夫。嬉しいよ、薫ちゃんの気持ち」
 「薫……」
 「ん?」
 「千堂のことは『瞳』って呼ぶのにうちは『薫ちゃん』なんですか?」
 照れくさそうにそう言う薫を見て、くすっと笑い、呼び掛ける。
 「薫」
 「耕介、さん……」
 抱きしめあっていた二人がいったん離れ、お互いを見詰め合い、段々と顔が近づいて行く……



 「はい、そこまでー!!」
 バァン!!
 威勢のいい声と共にふすまが凄まじい勢いで開かれる。
 思わずばばっと飛びのく二人。
 そして、そろそろとふすまの方を見るとそこには瞳がいた。
 それだけならばそんなに驚くほどのことも無いが、今回は様子が違った。
 着ているものがYシャツ一枚である。スカートもズボンもまるで無し。
 しかもシャツのボタンも第三ボタンまではだらしなく外されていた。

 ……時が流れた。
 あまりにも唐突な状況を目の当たりにし、耕介も薫も目が点になっていた。
 そんな事は全く意にもかいさないかのように瞳は言葉を続ける。
 「どう? 耕ちゃん」
 くるりん。
 瞳が器用に一回転すると、本当にそんな擬音が聞こえるような気がした。
 「せ、千堂! な、なんね、そのふしだらな格好はっ!」
 やっと我に返った薫が顔を真っ赤にして瞳にまくしたてる。
 「ふっふっふ。元彼女をなめてもらっちゃ困るわね。耕ちゃんの好みぐらい先刻ご承知よ!」
 びしっ!自信満々な笑みを浮かべて薫に指を突きつける瞳。
 「だ、第一、お前今日はシャツじゃなかったじゃろうが。どうしたんね、それ!」
 「仁村さんに相談したら快く渡してくれたわ」
 「じゃ、じゃからと言ってそんな格好……。耕介さんも何か言ってやって……」
 瞳のあまりの自信満々ぶりに言葉が続けられなくなり、耕介に助け船を求める。
 「……ほへ?」
 そんな間抜けな声で返答する耕介の鼻の下は、でろーんと伸び切っていた。
 そりゃあもう見事といってもいいぐらいに。
 「こ、耕介さん!!」
 先ほどにも増して顔を真っ赤にして怒鳴りつけてくる薫の声で、やっと我に返る耕介。
 意識をはっきりさせようとするかのように頭を一回ぶんと振り、責任ある大人の顔に戻って瞳をたしなめる。
 「そ、そうだぞ、瞳。仮にも嫁入り前の娘が」
 「それにほら。ブラつけてないんだよ」
 耕介の話など全く意に介していないかのように、瞳はそういって胸のところをちらりと見せる。
 言った通り、下着を着けていない胸がシャツの合間から見える。
 ぐびっ。
 生唾の充填は完了していたらしい。
 「見たい?」
 瞳の声に思わず反射的に首を縦に振ってしまう。
 その反応を見て、瞳は満足したように微笑みながらボタンを外していく……
 「やめんかあっ!!」
 薫が一言そう叫ぶと瞳に飛び掛かる。鍛え抜かれた薫の体が飛び、瞳に襲い掛かる。
 しかし瞳は全く動じずに、それを流れるような動作で受け、そのまま腕を取り、地面に組み伏せ、腕を極める。
 「ふっふっふ。剣を持ってない薫なんか敵じゃないんですよーだ」
 にこやかに笑いつつギリギリと逆関節に締め上げる。
 「いたっ!いたたたたたっ!」
 そんなハイレベルな攻防があり、瞳が素手での格闘においてキャリアの違いを見せつけ、薫にピンチが訪れている中。耕介の頭の中は一つのことでいっぱいだった。
 『……尻?』
 先ほど、瞳が薫の攻撃を捌いた際のことである。薫の攻撃の勢いを利用し、そのまま組み伏せる時。
 その体さばきの中、耕介は確かに見た。
 Yシャツの裾がめくれ、その下が見えた。瞳は下着を履いていなかった。
 「瞳、お前、下着……」
 耕介が振り絞るようにやっとそれだけ言うと、(薫の腕は相変わらず極めたまま)耕介の方を向いた瞳の顔が真っ赤になる。
 「いやん、耕ちゃんのえっち♪」
 照れたように顔を赤くし、いやいやと首を振りながら薫の腕を強烈に締め上げる。
 「いたたたたたた!」
 「お、おい瞳! 薫ちゃんの腕がっ!!!」
 「あ」
 ぱ、と。薫の関節を極めていることを本当に忘れていたらしい瞳は、耕介の言葉を聞いて慌てて薫の手を放す。
 やっと解放され、ぜぇぜぇと息をする薫。
 「ごめんね、すっかり忘れてたの」
 にこやかに薫に微笑みかけ、あやまる瞳。

 そんな二人のやり取りの中、耕介は瞳から目を離せないでいた。
 さっきからのドタバタのおかげで瞳のワイシャツは乱れ、ボタンも残るは下の二つだけとなっっている。
 何かの拍子でするりと脱げてしまってもおかしくはない。
 いけないとは思い、何度も目をそらすがどうしても瞳の方を見てしまう。
 そうやって耕介がちらちらと瞳の方を盗み見ていると、突然薫がすっくと立ちあがる。
 そして、何事かという風に見つめる二人をよそに、何かを決意したかのような、そんな顔をしてふすまを開けて部屋を出る。

 たったったったったっ……
 幾分大き目な足音を立て、薫は去っていった。

 突然のことに呆然と座り込む耕介。
 しかし、その横にすりすりと瞳が寄り添ってくる。
 「やっと二人っきりになれたわね」
 「いや、でも薫ちゃんが……」
 「そんなことはいいから」

 ふよっ。

 薫の思いつめたような顔がどうしても頭から離れず、浮かない顔をしている耕介にそんな感触が届く。

 『……ふよ?』

 見ると、自分の腕に瞳がすがりつき、Yシャツの前がはだけている都合上、耕介の腕が瞳の胸のあたりに抱きしめられている感じになっている。

 『直……ですか?』

 今までにない甘美な感触に耕介の全神経は腕に集中する。
 しばしその感触を味わっていると、すっと瞳が離れる。
 「耕ちゃん、誕生日プレゼント……」
 そういいながら今度は前に回り、耕介の首に腕を回す。
 「プ、プレゼントって?」
 あまりのことにどぎまぎとし、答えは大体見当が付いているのだが瞳に問い掛ける。
 「もちろん、わ・た・し」
 言って瞳が耕介にキスしようとした瞬間、
 バァン!!

 またも凄い音を立ててふすまが開く。
 二人とも抱き合ったまま、反射的にそっちを見る。

 ……誰もいない。

 「もしもーし」

 ……耕介が少し間抜けな口調で呼び掛けてみるが返事はない。

 「誰かいるの?」

 ……瞳も問い掛けてみるが、同じく返事はない。

 また少し時間が経った後、耕介が思い出したように呼び掛ける。
 「……薫ちゃん?」

 ぎしっ

 ふすまの陰で音が鳴る。
 「薫? いるの?」
 問い詰めるような口調で瞳が声をかけるが、無反応。
 人の気配がすると言えばするのだが。

 しばし無言の時間が流れる。

 やがて、気が取り直したように耕介の方を見直す。
 「じゃ、続きしましょうか」
 さっきから腕を回したままの状態だったので、そのままゆっくりと抱き付いていく。
 「やめんかあっ!」
 叫び、ふすまから飛び出てくる薫。
 二人ともさすがにこの状況で予想できないほど馬鹿ではないので、今度は驚くことなくそちらの方を見る。
 しかし、そこにはある意味予想外な、でも予想できたといえばできた、裸Yシャツな薫が立っていた。
 「薫ちゃん……」
 耕介に声をかけられ、その時始めて自分がその場に出てきたことに気づいたように、とたんに真っ赤になる薫。
 思わず反射的に逃げ出しそうになるが、何とか踏みとどまる。
 「千堂! 離れんかいっ!」
 そう言いながら部屋の中に入ってきて、瞳を耕介のほうに飛び掛かってくる。
 その時、薫の裾がひるがえり、またもその下が見える。
 『薫ちゃんも……下着無し?』
 そんなことを考えている耕介をよそに薫は二人を引き剥がす。
 未だに驚きが覚めやらないような、唖然とした顔つきのままであっさり引き剥がされる瞳。

 「……薫がそこまで決心するなんて」
 「やられた」という顔をしてつぶやく瞳。
 そんな瞳を尻目に、
 「これで条件は五分と五分。改めてお願いします」
 そう言ってぺこりと頭を下げる薫。
 気を取り直して瞳も立ち上がり、耕介に向かう。
 「そうね。決めてもらわないと」
 そう言って耕介の方を見つめる。
 まさに天国から地獄。もはや薫の下着がどうこうと考えている場合ではなくなってしまった。
 二人のあまりの真剣さに押される耕介。
 さっき、眼前に十六夜の切っ先を向けられた時よりもはるかにきついプレッシャーが襲い掛かってくる。
 「いや、二人とも」

 ゴキッ。

 どちらからかはわからない。もしかしたら両方かもしれないが、「二人ともかわいいよ」
 耕介がそう言おうとした瞬間に拳を握り締め、関節が鳴る音が響いた。
 いや、響いた音が聞こえた気がした。
 部屋の空気の密度が上がり、重さまで感じるようになった気がする。

 『い、いかん! 下手なことを言えば命がないっ!!』
 一応、薫と瞳という一流と言っても過言ではない武道家と親しくしてきた耕介だ。
 それぐらいの危機は察知できる。
 しかし、容易にどちらかを選ぶわけにはいかない。
 耕介は確かに二人とも嫌いではないし、むしろ好きである。
 「愛している」と言ってしまっても過言ではない。
 しかし、二人ともそれぞれに魅力的でどっちかには決められない。
 臆病とか優柔不断とか言う人もいるかもしれない。
 それを否定する気はないが、これはどう見ても一生に関る問題である。
 そうやすやすと決めるわけには行かない。

 しかし二人にそんな事を説明も出来ず、耕介はただなすすべもなく、
 二人にじりじりと詰め寄られ、それに併せて座ったままじりじりと後ずさる。
 しかし、しょせんは六畳そこそこの部屋なので、大した距離を移動することも出来ず、壁に追いつめられる。

 「さあ、もう逃げられませんよ」
 薫が熱に浮かされたような笑みを浮かべ、耕介に宣告する。
 「そうね。まさかここまで来て『二人ともかわいい』とか『まだ若いんだから』なんて逃げは通用しないわよ?」
 くすくすと、妙におかしそうに瞳が笑いながら言う。
 壁際に追いつめられた耕介であるが、二人の真剣な目を見て、やがて決意したかのように二人をキッと見つめ返す。



 「わかったよ、二人とも。今まで中途半端でいた俺が悪かったんだ」
 語り出す耕介。二人ともそれまでゆっくりと詰め寄ってきたのだが、耕介の眼前で歩みを止め、立ち尽くす。
 「本当は二人とも可愛くて選ぶわけにはいかないんだけど」
 そう言って耕介は二人の視線からいったん逃れるように下を向く。
 「でも、親友同士の二人にこれ以上争わせるわけにもいかないから言うよ」

 ごくっ。

 緊張からか、カラカラに鳴った喉を潤させるために無理矢理つばを飲み込む。
 さっきまではあんなに際限なく沸いて出てきたつばが、今回はまるで出てこない。
 二人も耕介の前に立ち、無言で耕介の言葉を待つ。
 しかし、なんとか声を絞り出す。
 「俺が本当に好きなのは……」

 どさっ。

 二人の方にまた向き合い、そこまで言った瞬間、瞳が抱きついてくる。
 「ひ、瞳?」
 思わず声を裏返らせ、なんとか抱き留める。
 「い、いや、今は大事な話が」

 どさっ。

 慌てふためきながらそこまで言った瞬間、今度は薫が抱きついてくる。
 「か、薫ちゃんまで!?」
 またも何とか抱き留め、二人の顔を見る。



 「すー、すー、すー……」
 ……寝ている。
 二人とも、酔いが回りきったらしく、安らかな寝息を立てて眠っている。
 「……はーっ……」
 耕介が何だか安堵したような、それでいて残念そうな、そんな複雑な表情でため息を吐く。

 「ま、焦ることはないか」
 ひとりごち、普段の耕介ののんびりとしたような表情に戻り、二人をみる。
 「あーあ、こんな幸せそうな顔して寝ちゃって……」
 「そりゃあなあ。愛しい男の胸で寝られるんだから幸せだろう」
 「いやまたそんな、からかわないで下さいよ」
 「いやいや、やるねぇ、この女殺し!」
 「やめてくださいよ、真雪さん……っ!!!!???」

 何時の間にか自分の隣に真雪がいた。
 ちなみに服は着ているが。
 「どうした?ひとをそんなお化けでも見るような目で見るなよ」
 いつもの調子で続ける真雪。
 「まままままま、真雪さんっ!何してるんですかそこでっ!?」
 「いや、一応同じ寮の住人とその親友が喧嘩して倒れたんだ。見に来るのが当然だろう」
 焦りまくる耕介に対し、あくまでいつも通りの真雪。それを見て耕介も落ち着いたのか、
 段々といつもの調子で会話できるようになってくる。
 「っていうか、気絶させたのは真雪さんでっ!」
 「いやだって、あの状況は止めなきゃまずいことになってただろうが」
 「!!!……はぁ。もういいです」
 なおも反論を続けようとしたが、諦めたようにため息を吐いて反論を止める。
 「なんだ、もう終わりか。つまらん」
 「あのですねえ」
 やはり、気を取り直して一言言おうとした耕介を手で制し、真雪が続ける。
 「いや、様子見に来たのは本当なんだがな。……やるなあ、耕介」

 『しまったっ!!!』

 耕介が気づいた時にはもう遅く、真雪はいつも人をからかう時にするにやにや笑いを浮かべ、耕介の方を見ていた。
 「いやこれは、介抱してたら二人とも寝ちゃって……」
 無駄とは知りつつ、一応弁解してみる耕介。
 「そんな格好でか?」
 「うっ」
 一言で返される。やはり無駄であった。
 その後、真雪のいじめはたっぷり十数分続けられた。



 「まあ、若いんだからしょうがないが、知佳に悪影響を与えないようにな」
 耕介がもう息も絶え絶えという感じになってくると、真雪はそう言い残して帰ろうとする。

 思わずほっと息を付く耕介だが、そこではたと思い付く。
 「つーか、瞳にYシャツ貸したの、真雪さんでしょ!!!」
 「勘違いしてもらっちゃ困る。神咲もだ」
 「そういう問題じゃねぇっ!!!」
 思わず逆上する耕介に対し、真雪がなだめるように手を肩にぽんと置く。
 「まあまあ。なんならあたしもその格好してやろうか?久しぶりに」
 「……もういいから、二人を移動させて下さい」
 「今、悩んだだろ」
 「悩んでません!」
 「やーいやーい、耕介のフェチ〜」

 ぐうの音も出ず、がっくりと来る耕介。
 すると突然、真顔に戻る。
 「まあ、確かにこのままじゃ二人とも風邪ひきそうだしな」
 ほっとする耕介。
 真雪が瞳をどかしたところで、自分も薫をどかせて布団に運ぼうと……したところで、
 瞳が耕介の真横に置かれた。そのまま耕介の肩によりかからせる。

 「……なにしてんですか、真雪さん」
 「いや、お前の希望通り、どかしているんだが」
 「そんなところじゃ意味ないでしょうがっ!」
 そう耕介が叫ぶ間も真雪は作業を黙々と続け、反対側に薫を配置する。
 「いやだから」
 「まあまあ。この体勢ならそんなに息苦しくもないだろ?」
 「そりゃそうですけど」
 そう耕介が答えると、床に敷いてあった布団を一枚取り、三人に被せる。
 「真雪さん?」
 「じゃ、そういうことで」
 「なにしてるんですか!」
 「いや、愛する男のそばにいたいと言う乙女の願いをかなえてやろうというおせっかいをだな」
 「おせっかいだと解っているなら止めて下さいっ!」
 「じゃ、そーゆーことで」
 自分の言いたいことだけ言い、真雪は去る。

 『か、勝てねぇ。あの人には絶対勝てねぇ……』

 そんな事を考えていると、開けっ放しの扉から真雪が顔を出す。
 「変なことしてもいいけど、大きな音出すなよー」
 「しませんっ!!」
 耕介が叫ぶと同時に、扉は閉められた。



 動く人が誰もいなくなり、静かな部屋の中。
 とりあえず二人をどかせようとするが、真雪が絶妙なバランスで二人をよりかからせたのか、片方を少し動かすともう片方は倒れてきそうである。
 さっきまでの修羅場の連続を考えると、その危険を冒すわけには行かない。
 それでも何とかしようともぞもぞしていると、ずるっと布団がずり落ちそうになる。
 「いかんいかん」
 そう呟いて布団を引きずりあげようと瞳の方を見ると、ただでさえはだけかけていたYシャツがさらにはだけ、ボーダーラインギリギリというところまで来てしまっている。
 「い、いかん!」
 慌てて逆を見る。すると、そっちには瞳にも増してボーダーギリギリどころか、「もうやばいだろ、これはさすがに」と言うところまで、豪快にはだけてしまっている薫がいた。
 「真雪さん、何時の間に……」
 あれだけの時間でよくここまで出来たものだと素直に感心する。
 「……とか言ってる場合ではないっ!!」
 そう言って布団をずり上げ、二人の体を隠す。
 「精神統一、精神統一……」
 ぶつぶつとつぶやき、二人のことを気にしないようにする。

 ……全くもって無理である。
 両脇に二人の重さが感じられるし、何より、さっきあらわになっている肌をしっかりと見てしまった。
 あれを瞬時に忘れられるような頭はしていない。
 しかも、顔が近くにあるので二人の寝息が頬をくすぐる。

 「……い、いかん! 猛烈にいかん!」
 一歩間違えば手を出してしまいそうである。
 そりゃ嬉しいことに二人とも自分のことを慕ってくれているらしいが、そのうち片方に決めるなんて、耕介にはとても出来そうにない。
 さっき、結論を出したような気もするが、なにぶん極限状態のことだったのでもうよく覚えてはいない。

 『……それならば二人同時に……』
 とてつもなく魅力的な意見だが、どう考えても命の保障がない。と、言うか絶対殺される気がする。

 「のーっ!!!!!!」

 耕介の地獄の夜は今始まった……



 次の日の朝。
 耕介の部屋の前には二人の女性がいた。
 「さすが耕介君。耐え切ったようやね」
 「ちっ。あそこまでお膳立てしてやったのに何もしないとは……あの、根性無しめ」
 ゆうひと真雪であった。
 「うちは、信じとったで」
 ゆうひは笑いを堪えつつ、白々しくそう言う。真雪も、つられて笑った。

 二人は耕介の部屋を覗き込んでいる。
 中には幸せそうな顔で安らかな寝息を立てる瞳と薫。
 そして、その真ん中で疲れきって、やつれたように見える耕介。

 「ま、ともあれ、賭けはうちの勝ちやな」
 「ちぇっ。やってらんねーよなー」

 そういって真雪がゆうひに一万円手渡す。
 「まいどおおきにー♪」
 ゆうひが嬉しそうにそれを受け取り、それを見て悔しそうに真雪が言う。
 「くそ、次は負けねぇぞ。勝ち逃げは許さん」
 びしっと言い放ち、ゆうひを睨み付ける。
 「んー、そやねえ。クリスマスやろー。そんで一月に瞳ちゃんの誕生日。さらにバレンタインデーにホワイトデー、と。まだまだ楽しめそうやね♪」
 にっこりと。指折り数えた後に本当に楽しそうにゆうひが微笑む。
 「次はぜってぇ負けねぇっ!!!」
 真雪がゆうひを睨み付ける。

 耕介の受難はまだまだ続きそうである。


―Fin?―

あとがき

はい、長い文章読んで下さった方、ありがとうございます。
「世界一何もしない管理人」右近でございます。
現在、サイト設立から1年ちかくを数え、ヒット数も4万をオーバーして、CG38枚、SS5本を数えてるのに俺の作品全くありません。
……さすがにまずいだろ>俺

と、いうわけで今うちのサイトで一番流行っているとらいあんぐるハートを題材にががっと書き上げてみました。構想併せて大体1ヶ月ってとこでしょうか。
いや、実際の作業時間は1週間なかったけど(笑)
まあ、中身決めるのは早かったんですわ。キャラは一押しの瞳ちゃんを出すことに決め、んで修羅場物書こうと思ったんでライバル選定。で、薫に決定してあとは勢いのみでなんとかしてみました。
最初は舞台を「1」にして瞳ちゃんと七瀬の話にもしようと思ったんだけど……何度考えても18禁にしかならないので今回見送り(笑)

あと、実はこのSSは公開中止になるかもしれませんでした。
実はこれを書いてる途中に酷似したシチュエーションのSSを別サイトで発見してしまい(ちなみにそっちは18禁SS)、全くの偶然とはいえ、冒頭なんかはもう偶然とは思えないぐらいそっくりだったんです。
「さすがにこいつはやばいかなー」と、思ったんですが、個人的にのりにのってきて、プロットが完成した後だったもので悩みに悩んだ末、書き上げてしまいました。
本当はその作者の方に「こういうSSを書きました」と言うメールを送ろうかとも思ったんですが、全くの偶然なのに言い訳がましいメール送って誤解させてしまうのも嫌だと思い、メールを送るのも辞めました。
勝手な話ではあるけども、考えた末なのでまあ、みなさんも生温かく見守っていただけると嬉しいです。

なんか後書きが必要以上に長くなってしまいましたが、
最後に、つたない文章を添削してくれたちくわさんと、最後まで読んでくれた人に感謝の気持ちを込めて、締めさせてもらいたいと思います。
それでは、これからも「裸Yシャツ友の会」をよろしくお願いします。

2001/01/31 11:23(仕事中)
右近